秋の夜長に

平安時代の女流作家の代表といえば
「源氏物語」の紫式部と「枕草子」の清少納言。

今でいうところの
長編小説作家が紫式部で
エッセイストが清少納言。


人物として個人的に惹かれるのは
明るくユーモアのある清少納言です。


清少納言という人は
平安時代の一条天皇のお妃である中宮定子の
″お世話役″兼″家庭教師″のような役割を
担ったひと。
陽気で盛り上げ役な性格で
院の中でもひときわ人気者だったのだとか。


清少納言の書く
当時の平安女子の″わかるーっ″という共感を
グッと惹きつけるトピックの数々。


エッセイ「枕草子」はまさに女子ウケそのもの。


「こういうものってときめくよね」
「こういう時にこう感じるのが好き」
「こんな風に世界を見つめてみたら楽しくない?」という調子で共感を促しながら
作品全体が優雅で明るいムードに包まれている。

この感じ、千年前ですよ!?信じられない...


一方、紫式部はここから少しだけ
世代が後で中宮彰子に支えたひと。


そもそも源氏物語という作品は
まだ13歳だった
彰子が楽しめる読み物として、
恋愛指南の意味?も込めて
紫式部が天皇に頼まれて書くうちに
彰子に次の話次の話!とせがまれるうちに
あれだけ長くなったという説もあります。


紫式部は芸術肌なのか?
少し神経質でコンプレックスの多い
嫉妬深い人物として評されることも多い。


特に清少納言のことは
相当ライバル視していたようで
「ふんっ!あんなのはただのエッセイストよ。
本物の作家はわたし!」

というような感じで笑
人気者の清少納言にメラメラと嫉妬をしている様子が実際に本人の書いた日記に残っているほど。


でも今から千年前に源氏物語という
あれだけの質と量の
おもしろい小説を書き上げた紫式部には
そのあまりの才能に
やはり圧倒されてしまいます。


人間と人生というものが
千年も前にすでにすっかり書かれている。


そこまで昔に作られたそんな名作は
世界中探してもないようです。


あのシェイクスピアでさえ、
源氏物語の500年も後に出てきた作家。

世界ではじめての長編小説という意味でも
最高の芸術作品。
日本文学の最高峰。


源氏物語の面白いところのひとつは
色んな恋愛の形が登場するけれど
そのどれも、ひとつずつ、全て違うこと。

光源氏本人はひとりでも
登場する女性の個性がそれぞれ違う。
だからその数だけ違う物語になる。


自分より前に小説のお手本もなく
一から物語を考えてこごまでの大長編に仕上げるって考えられないくらいすごい。。


平安時代きってのプレイボーイ(架空だけど)
と評されることも多い光源氏ですが
物語が進むにつれて
どんどん人間的に大きくなってくるのも
この物語の魅力。


当然、たくさんの作家が
これまで現代語訳を手掛けました。


私が読んでみたのは(途中断念したものもあり)

谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴、田辺聖子、角田光代。


谷崎潤一郎訳は原文のもつ風雅さを生かそうとしすぎ?て、かなり忠実に訳しているのか、
私からすると、もはや原文並みに難解で
早々と断念。。


瀬戸内寂聴訳は谷崎訳に比べると
かなり読みやすいけど、
今の時代に読むには″現代語″とはいえない言い回しも多くてやはり少し読みにくく感じるかもしれない。

個人的に好きなのは田辺聖子さんの

「新源氏物語」

上・中・下 と
比較的薄めな
3冊にコンパクトにまとまっているし、
現代語訳というより、
田辺聖子流〝源氏物語″として
新しい物語に生まれ変わったような感覚で読める。

こういった古典の現代語訳は
その、品位を意識するあまり
現代離れした日本語になっているものが多い...
そうなると当然難しく、読みにくい。
かといって砕けすぎると
原文の持つ風雅な香りを失う。


この「田辺源氏」は
そのあたりのバランスが絶妙で、
今の言葉で限りなく王朝の雰囲気に浸ることを可能にするような言葉を当てはめたような雰囲気。


数年前に角田光代さんも
源氏物語の現代語訳を出版されました。




かなり分厚い本なので
まだ(上)巻の半分ほどしか読めていませんが
こちらはより、
明瞭で簡潔な表現で訳されているので
一番スッと入ってきます。


現代の言葉で千年前の古典を
軽やかに楽しめる贅沢さを堪能できる。


角田光代さんは5年がかりで
翻訳作業に取り組まれたようです。


このような圧倒的な名作に触れると
自分の読者としての″舌″が確実に
肥える手応えを感じる。


我流で進む
この読書道の道が
また一歩先の次の場所まで
橋が渡る感覚というか。


このところ、朝夕は涼しくなってきましたね。

秋の夜長に、源氏物語。

早く上巻を読み終えて
角田光代さんの(中)巻に
突入することとします。

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