ボリードの行方

数年前の南仏旅行の帰り、
出発まで時間があったので
ふらっと立ち寄った
ニース空港のエルメスブティック

店内には日本では店頭に陳列されていないような
人気のバッグがいくつも並んでいて...!

その中でもボリード31に関しては
ブラック、エトゥープ、ゴールド
と定番人気色が揃い踏み。

日本で特に人気のボリード。

使い勝手のいい31cm、
それも定番色というと
普通にお店に行くだけでは
すぐに手に入れられないイメージです。
 
エルメスの革を贅沢に使いながらも
主張しすぎないデザイン。

チャックのついた利便性、
肩かけできるストラップもついており
持ちやすいのが人気の理由だと思う(故に東京のママたちの所持率も高く、高確率でバッティング)

私自身はというと
実はすでに違うサイズで革違いの
ボリード27は持っていて
そちらはエプソンというパリッとした革で
小ぶりなサイズで持ちやすく、
満足していたのですが
そこがエルメスの魅力?怖い、、?ところ。
サイズ、色、革の種類で全く別物に見えてしまう


数センチ違うだけで
そんなに?と思うくらい
入る容量も全然違い、用途も変わってくる。

なので、27cmを所有していても31cmは別物...
ということになるわけです。。


ボリード31に関しては
それまで特に気になるバッグでは
なかったのにも関わらず...
実際、目の前にすると
とりあえず手に入れておかなくては...!
という謎の使命感に駆られ、、
そして当時のレートでは日本で買うより
数十万円も(....驚き!)
安く買えるということもあり
勢い余って購入することに...!


隣で見ていた夫は
「なんか君らしくないなぁ。
あの小さな方は似合ってるけど。。
これは、本当に欲しいものなの?」

と、いたって冷静な意見。

それを受け、

今となれば冷静になれるのですが、、
その時の私は軽い興奮状態。


「27cmとは容量が全く違う別物なの。
あったら絶対使うものだと思うし...。
あんな時やこんな時にも使い勝手がいいと思うから。何より定番だしね」と
それらしいことを言ったりして...。


「そっか。君の好きにすればいいよ」


と半ば呆れ気味に返答する夫。


.....そうして両者スカッとしない感じで
一応は手に入れたこのバッグ。


もちろん最初はお気に入りでした。
正しくは″お気に入り″にしようと頑張っていました。

自分が使いやすそうと
イメージしていたシーンで使ってみたり。
(例えば、子供の送り迎えや習い事、、
あれ?あとはイメージしてなかった...)

もちろんとっても素敵なバッグです。
革の質は申し分なく、
形も何十年も前に完璧に完成されたもの。
バッグは何も悪くない。

そんな素敵なバッグなのに
わたしが何度使っても
″自分のバッグ″にはならなくて。。

こちら側も″便利そう″だからと購入し、
そんな使い方をするものだから
バッグ側も当然、
いつまでもこちらに対し、他人行儀。

数ヶ月は意識的に″使おう″とおもって
使いましたが
意識が薄れると
途端に出番が少なくなり
次第に使わなくなり、、。


クローゼットの隅で
いつも選ばれず退屈そうにしている
バッグを見るたびに罪悪感が。。

そして空港のブティックでの
「本当に欲しいものなの?」
という夫のセリフが脳内フラッシュバック。
 
苦い、、、。

私にとってこの経験は
いくら″定番品″でも
″マストハブ″といわれていても
自分に合わないものは合わない。


永遠の定番品と言われているアイテムも
例え、便利でも自分が
心から好きだと思わなければ
自分のパートナーになれないし
相手もなってくれないんだ。


そんな勉強をさせてもらったと思っています。

それと同時に、
買ってから
ずっと思い浮かんでいたことがあります。

「このバッグはもしかすると
私より母に似合うのでは?」


持つたびに、
このバッグ、母にすごく似合いそう。

と不思議と毎回のように思って。


最近は中々会えなかったので
渡すタイミングがなく
次回久しぶりに
母が東京に来てくれるタイミングで
プレゼントしよう。と。

夫に聞いてみると
「それがいいと思う!お母さん似合いそう」と
同意見。


そして今回
久しぶりに上京してきてくれた母に
サプライズでプレゼントしました
(偶然にも敬老の日...!)


母は昔から欲しかったバッグだったようで
それはそれは喜んでくれて。


「ありがとう!すっごく素敵!大切にするね」


今までいくつかバッグをプレゼントしてきていますが今回のバッグが一番似合ってる。


このバッグを目にするシーンは
私の行動範囲だと、
″同年代のママたちが持っている姿″が
多かったので
完全なマダム世代の母が持つボリードは
意外と中々見たことがなく、新鮮に映りました。

バッグと本人の雰囲気がイコールで
いい意味でバッグが全然目立たない。


毎日を共にするバッグとして
持った瞬間からこなれて、
とても自然に見えました。





母の傍らで
ついに居場所をみつけた!
とばかりに
居心地の良さそうにしているバッグを眺めて
やっとこのバッグをしあわせにできたと
ほっと胸を撫で下ろします。




ニース空港で
駄々をこねた自分を思い出すと
数年経った今でも未だにバツが悪いのですが...(恥)

あの頃から、
このバッグはこうして母の元へ行く運命で、
だからあの時のわたしに
そんな行動を取らせたのだろうと
自分に都合のいいように解釈をして
ひとまず、めでたし、めでたしといたします。


夫よ、あの時はごめんね。
悔しいけれどあなたの意見はいつも
的を得ています。

おかあさん、いつもありがとう。
とても似合っています。

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