芝桜


先日の 節分の日

京都祇園の地で初めての

”お座敷遊び”

という経験をする機会に恵まれました

お邪魔する でも 
足を運ぶ   でもなく 

異空間 異世界に
”トリップ”する
という表現が
しっくりきた一夜  





節分の日のお座敷は

『おばけ』といって
舞芸妓さんたちが
いつもの姿とは違う仮装をする
特別な夜なのだとか


『節分おばけ』とは
節分の夜にばっこするとされる鬼を
目くらまし?するために
老婆が少女の髪型である桃割にしたり 
逆に少女が成人女性の髪型である
島田に髪を結ったりして
普段と違う姿をすることによって
その夜をやり過ごすための風習なのだそう


初めてのお座敷なもので 
何が普通で何が異装なのか
わからぬまま夜はスタート!


会がスタートすると
なんとも初々しく
かわいらしい舞妓さんたちが 
簪をしゃりしゃり揺らし
はらりはらりとまさに舞うように
花のような笑みで登場

おばけといっても
全員が仮装するわけではなく
綺麗どころは綺麗どころで
ちゃんといてくれるみたい

『おこしやす〜』


と早速席について
トクトクトク・・
日本酒を注いでくれる


目が合う にっこり


ああ・・・なんかいいかも

気分は和服を着た
お金持ちの恰幅のいいおじさまです

大正の大御所の文豪とか?


気分を雅に雅にもっていく


あちらもこちらも見渡す限りの舞芸妓さん

はんなりとした京言葉で微笑みかけられる 
思わずこちらもニンマリ。


・・・いい!

なんだかわかる。

この世界で大盤振る舞いしたくなる気持ち・・・


楽しいおしゃべりの
合間合間に
舞?演目?が繰り広げられます




この日は
入れ替わり立ち替わり
様々な置屋さんから
その日『おばけ』の出し物をする 
(舞とか演目とか出し物とかどういう呼び方が適切なのか・・)
芸舞妓さんたちが
二人組や三人組でやってきて
演目を見せてくれ
その後
客人に千社札という名刺を配り
席に着き
少しお話しをし
お酒をキュッと飲んだら
また次のお声がかかる料理屋さんへ・・・


普段がどうかがわからないのですが
その日は 
『おばけ』の日だからか
芸妓さんたちは
男装したりひょっとこ?になったり
いろんな大道具小道具が持ち込まれ
音楽もクラシックや民謡 
はたまたポップスなんかが
かかったり
かなり自由度が高い感じ 


お腹を抱えて笑ってしまうくらいの
はっちゃけた演目も多く
驚き・・・


舞芸妓さんって
はんなり雅やかなイメージが
強かったけれど 
結構体張って笑いも取りにくるのね・・!


この感じ
旦那衆はどういう気持ちで見ているのかな?
いつもと違うギャップがまたいいのかしら・・・?

とか色々と考えてしまいました


演目以外の時間は
その料理屋さんに派遣? されている
最初から席についてもらった
決まったメンバーの
芸舞妓さんたちとのおしゃべり


ベテラン勢の芸妓さんたちは
やはり誰と話せばいいか
よ〜く心得ているのか?
顔ぶれの中でも
小娘である私のところへは
あんまりきてくれません


思い込みかもしれませんが
その感じも花柳界っぽくていいので
あえて強くそう思いたい 笑


私についてくれたのは 
一回り以上も年下の
可愛らしい舞妓さんたち

なんと15歳〜20歳までのお嬢さん


このおしゃべりの時間がすご〜く楽しかった!!

少し前 
有吉佐和子さんの
花柳界を舞台にした小説

『芝桜』

の上下巻を
読了したばかりだったので
もう聞きたいことがたくさんで!


興味津々


もちろん芝桜は
小説世界だし
時代背景も
大正から昭和にかけてなので
現代とまた違うと思うのですが

自分の思い描いている夢を守り
舞妓さんが困らないであろう範囲で
色々と質問


特に印象的だったのは
舞妓さんは
インターネットの類は
すべて禁止されているということ
(もちろんスマホも持たない)


この時代の十代後半の少女が
SNSやインターネットの情報とは
無縁の世界で生きている!


そのことに軽く衝撃   


意味や実用性は無いように感じ
非合理的に感じる
だけどかっこいい
それがロマン


ロマンだわ、、!


他にも
この道を志すきっかけや
普段はどんなものが好きなのか
メイクの方法や
置屋さんでの暮らし
お稽古事のことなど
おしゃべりは尽きない


そのひとつひとつに
おっとりと
『〜〜〜どす〜』 
『〜やす』と
丁寧な京言葉で受け答えしてくれて
本当に嬉しくなっちゃった、、!


そしてついつい盃はススムススム・・・   



今宵は
他に何を語って明かしましょうぞ!


と気分も盛り上がってきたところで
あっという間に
楽しい夢の時間の
幕閉じの時間


後ろ髪引かれつつ
玄関に向かうと


最後に舞妓さんから置屋さんの名刺を渡され

『今度は是非 女子会でもおこしやすぅ〜
 お子さんをお連れなさってもよろしおす』


だなんて営業してもらう

え!そんなことできるの?
とちょっとその気に

でもシステムってどうなってるんだろう?
なんて現実的なことも頭をかすめる

女子会するならそのあたり是非知っておきたいのだけれど、、

そんなことを聞くのは
この世界では無粋なことなのかもしれない・・・とも思い 


『いいですね!連絡します〜』
なんて
気前いいふうを装って言ってしまう


わたし 
男性に生まれなくてよかったかも 
まんまと手の平に乗っちゃうタイプかも・・・


料理屋さんを出ると
外は雨 

料理屋 置屋 お茶屋さんが軒を連ね 
軒先の仄かな灯りが
ちらちらと
その光を受けて
雨に濡れた通りがぼんやり滲んで光る


タクシーを走らせ
あっという間に
滞在しているホテルに着くと
そこはすっかり現実世界


たったさっきまでいたところは
どこだったのだろう


現代であるのにタイムトリップしていたかのよう


そして日本であって日本じゃないような気もする


知らない非日常が日常として営まれている場所


そう 
ファンタジー小説の架空の場所みたい


そうかわたしは
『芝桜』を
どこかファンタジー小説として
読んでいたのかも


美しく結い上げられた黒髪に

真紅の口紅 

襟足の白粉 

合間合間に鮮やかな芝桜
  


あの夜 
出会った彼女たちの姿を 
鮮明に思い浮かべながら
もう一度小説を読み返したら
また物語がくっきりとした輪郭を持つ気がする


『芝桜』


美しく豪華絢爛 

狡く恐ろしく薄情で

かと思えば情に厚く

女社会のビジネスのお話であり

友情の物語でした

花柳界に生きる
タイプの全く違う
ふたりの女性の一生を描く長編小説


有吉佐和子さんは天才だ・・・
毎度 才能に感服する


ひとつ悔いが残るのは
この作品をkindleで読んでしまったこと

kindleはいつでもどこでも手軽に読書できて
すでに生活になくてはならないものですが
やっぱり小説に関しては
紙の本がいいかな    

小説って紙をパラパラめくって 
いろんなシーンが早送りのように
目に飛び込んできて
読み返したくなることが多いのだけれど
kindleは残念ながら
それができない

実用書はkindle 
小説は紙の本って
前に決めたはずなのに忘れてしまっていたみたい






いいタイミングでの
貴重な経験に感謝

だけど だけど 
こういうことはほんのたまにがいい

華やかな物事との
ほどよい距離は
 自分の内の
想像力を護るための
大事なバランス
  

知り過ぎて 
そのものごとに対し
夢を見られなくなることは
往々にしてあること


「垣間見る」
要はチラ見する
そこから 
エッセンスだけいただいて
あとは 自分の頭で好きなように


すべてがそのようにはいかないけれど
距離を選べるものはそういう感じが好みかな






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